近年、不登校の子どもたちが増えている。文部科学省の調査によると、2022年度の不登校児童生徒数は約29万人と過去最多を記録した。しかし、今の不登校は、かつての「学校が怖い」「行きたくても行けない」ものとは異なる新しい形態が増えている。
千葉司氏の著書『令和型不登校対応マップ ゼロからわかる予防と支援ガイド』(明治図書出版)は、従来の不登校とは異なる「令和型不登校」について詳しく解説し、学校・家庭・地域がどのように対応すべきかを示した一冊だ。本記事では、この「令和型不登校」に焦点を当て、その特徴と支援のポイントを解説する。
🔎 令和型不登校とは?
「不登校」と聞くと、「いじめ」「学校恐怖症」「家庭問題」などをイメージする人が多い。しかし、令和時代の不登校は、これまでの不登校とは異なる特徴を持つ。千葉氏はこれを「令和型不登校」と定義している。
✅ 令和型不登校の特徴
- 学校に行きたくないわけではないが、行く意味を感じられない
- 「授業がつまらない」「学ぶ意味がわからない」と感じる
- 学力には問題がなく、テストや課題はこなせる場合も多い
- ゲーム・SNS・YouTubeなどのデジタル環境との親和性が高い
- 家にいてもネットを通じて友達とつながることができる
- ゲームの世界では「自分の居場所」があり、学校よりも楽しいと感じる
- 「なんとなく行きたくない」「無理に行かなくても困らない」と考える
- 「体調が悪いわけではないが、朝になると学校に行く気がしない」
- 「親も無理に行けとは言わないし、特に問題はない」と思っている
- ストレス耐性が低く、少しの不安や疲れで学校を休みがち
- 「今日は体育があるから休みたい」「グループ活動が面倒だから行かない」
- 少しの失敗や対人トラブルで心が折れ、継続的に休むようになる
- 家庭内での居心地が良く、「学校に行く必要性」を感じにくい
- 親が不登校を「悪いこと」とは考えておらず、受け入れている
- 学校よりも家の方がリラックスでき、ストレスが少ない
💡 令和型不登校は「学習困難」ではなく「環境適応の困難」
千葉氏によると、令和型不登校の子どもたちは、学力や知的能力に問題があるわけではない。むしろ、学校という「画一的な環境」に適応しにくいことが原因である場合が多い。
🛠 令和型不登校の対応マップ——「無理に登校させる」は逆効果
千葉氏は、本書の中で「令和型不登校にどう対応すればいいのか」を詳しく解説している。そのポイントをいくつか紹介する。
📍 1. 「学校に行かせること」より「学びの場を確保する」
令和型不登校の多くは、学校の環境に適応できないだけで、学ぶ意欲を失っているわけではない。
- フリースクール・オンラインスクールの活用
- 家庭学習のサポート(ICT教材の活用)
- 学校以外の「学びの場」を探す
特に、オンラインスクールやICT教材を使った学習は、令和型不登校の子どもたちにとって有効な選択肢になる。
📍 2. 「不登校=悪いこと」という価値観を変える
親や学校の先生が「不登校=問題」と考えると、子どもにプレッシャーを与えてしまう。令和型不登校の場合、学校に行かなくても「学ぶ場」があれば大きな問題にはならないことが多い。
- 「学校に行かないことは悪いことじゃない」と伝える
- 「行くかどうか」より「今の気持ち」を大事にする
- 「学校に行かない=将来がダメになる」という考えを捨てる
「どこで学ぶか」より「どう学ぶか」が大事 という視点を持つことが重要だ。
📍 3. 親が「焦らず、無理をしない」ことが大切
親が「なんとかして学校に行かせよう」と焦ると、子どもとの関係が悪化し、不登校が長引く原因になる。
- 「行きたくない理由」を無理に聞き出そうとしない
- 「何かしたい」と言い出したときに、すぐにサポートできる環境を作る
- 不登校専門の相談機関(教育相談、スクールカウンセラーなど)を活用する
📝 まとめ——「不登校は学校に行かせるだけでは解決しない」
『令和型不登校対応マップ』では、従来の「不登校=学校復帰を目指すもの」という考え方では、令和型不登校に対応できないと強調している。
✔ この記事のポイント
✅ 令和型不登校は「環境適応の困難」から生まれる
✅ 学力や知的能力の問題ではなく、「学校に行く必要を感じない」ことが多い
✅ 無理に学校へ行かせるより、「学びの場」を広げることが大切
✅ 「不登校は悪いこと」という価値観を変えることが、解決の第一歩
令和時代の不登校は、子どもたちが社会の変化に適応する中で生まれている。「学校に行くこと」だけにこだわらず、子どもが学び、成長できる環境をどう作るか を考えることが大切だ。
不登校で悩んでいる家庭や教育関係者にとって、本書は新しい視点を提供してくれる一冊だろう。